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水無瀬おすすめのティーラウンジは、落ち着いた内装で、インテリアなども洒落ていた。クラシックが流れ、いかにも高級そうである。
店員の置いていったメニューを覗くと、やはり思ったとおりだ。ケーキと紅茶のセットで千円は超えている。菜花が普段お茶する場合はチェーン店がほとんどで、飲み物のついたケーキセットで六百円ほど。ここはその倍だ。
「好きなのを選んでいいよ。どのケーキと紅茶を合わせたらいいのかわからなかったら、店員さんに聞けばアドバイスももらえるし」
「はい、ありがとうございます」
とはいえ、人の奢りだ。ここはできる限り謙虚に、と思っていたら、結翔はオーダーを水無瀬に任せてしまった。
「俺、水無瀬さんと一緒で。それがおすすめってことでしょ?」
ほんの少し首を傾げてニッコリと笑う。
これこそ出た、というやつだ。この笑顔で大抵の人間は落ちる。小さい頃からずっと、結翔はこの笑顔で大人を手玉に取ってきた。
こんなの、可愛いから許されるんでしょ! と心の中で盛大にツッコミを入れ、菜花はメニュー表で自分の顔を隠す。今の顔を二人に見せるわけにはいかない。
「ったく、吉良はしょうがないな。お前、絶対末っ子だろ? この甘え上手が」
「惜しい! 一人っ子です。でも、菜花とは幼馴染でもあるので、俺、兄貴ですよ!」
「兄貴ってガラか? 杉原さん、こいつ、ちゃんとお兄ちゃんしてた?」
話を振られ、菜花はメニュー表から顔を上げる。少し動揺しながらも、こう答えた。
「ある意味では……」
「ある意味?」
「よく遊んでくれたんですが、同じくらいよく揶揄われて。だから、遊んでくれてたんじゃなくて、私で遊んでたんじゃないかと」
「おい!」
「ははは! 本当に仲がいいんだね。羨ましいよ」
よかった。場がより和んだ気がする。
結翔はコミュニケーション能力が高く場を和ませる天才でもあるが、どうしてだか、いつも以上にそう意識しているように見えた。そこに何らかの意図を感じる。だから、頑張ってそれに乗ってみた。
結翔を見ると、満足そうな顔をしている。どうやら当たりのようだ。
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