13.隠れた真相

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「疑惑は晴れたかしら? 他に聞きたいことは?」  一番聞きたかったのは、水無瀬との関係だった。そこがクリアになれば、他は思いつかない。  横山が会社の金に手をつけた理由は、借金の返済だった。水無瀬は、専務の娘を手に入れるため。 「水無瀬さんとは、別れるんですか?」  その答えは、微笑みで返された。  おそらく、別れるのだろう。付き合う理由はもうない。  水無瀬は自分で身を持ち崩したのだ。直接手を下したわけではないが、復讐は完了した。 「最後に一つ」 「なにかしら?」  どうして── 「どうして、ここまで正直に話してくれたんですか?」  それを問うと、仁奈は呆気に取られたような顔になり、声をあげて笑い出した。 「あはははは! 今更? 話を聞きたがったのは、あなたでしょう?」 「ですが! 高橋さんは拒否することもできたし、無視することもできました!」  仁奈は笑いを収め、菜花をじっと見つめる。その強い視線に目を逸らしそうになったが、それは逃げのような気がして、菜花はその視線をしっかと受け止める。 「そうね。……どうしてかしら。拒否も無視も、しようとは思わなかった。あなたになら、話してもいいと思ったのかもしれないわね。ううん、妹以外の誰かに、話を聞いてもらいたかったんだわ」 「高橋さん……」 「話したところで、後ろ暗いところなんてない。私がキャバ嬢をやっていたからといって、規則違反でもないし。失恋から立ち直るために、気晴らしでキャバ嬢を始めた。そこで偶然水無瀬と出会い、ちょっとした復讐をしてやろうと考えた。それだけよ」 「はい……」  仁奈の言うとおりだった。 「さ、辛気臭い話はこれで終わり! 杉原さんが本当に派遣社員なのかはわからないけれど、まさか未成年ってことはないでしょう?」 「え? はい! 成人してます!」 「なら、飲みましょう」  そう言って、仁奈はワイングラスを手に取った。中に入っているのは、透明の液体。これは日本酒だろう。 「杉原さんの前途を祝して、乾杯」 「か、乾杯」  ワイングラスで飲む日本酒など、初めてだ。  液体を喉に少しずつ流し込んでいく。香る匂いはなんとも言えず豊かで、コクがありつつも口当たりはすっきりとしていた。ワイングラスで飲む意味がよくわかる。 「美味しい……」 「ふふ、気に入ってもらえてよかったわ」 「これ、何ていうお酒なんですか?」 「獺祭(だっさい)」 「獺祭ですね。覚えました!」 「また飲めるといいわね」 「はい!」  そこから先は、仕事とは関係のない話。  会社の中とは違い、仁奈の表情はコロコロとよく変わり、よく笑う。まるで別人のような仁奈は、とても魅力的だった。  いつかまた、幸せな恋をしてほしい。それを願わずにはいられない。  来た時の緊張感など忘れたように、菜花は仁奈との時間を思う存分楽しんだのだった。
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