余命宣告

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病室の外は綺麗な秋空が広がっている。 そろそろ友達がお見舞いに来る頃ーー と思っていたら、ちょうど廊下から聞きなれた声がして、すぐにドアが開いた。 「やっほー、桜ぁ来たよ」 「みんな、来てくれてありがとう」 特に仲良かった3人の女友達が入ってきて、寂しさで溢れていた病室が一気に明るくなった。 「検査入院って言ってたけど、結果どう?」 「んー、大したことなかったみたい。」 「そうなの?ほんとによかったー。超心配してたんだよ!」 そう言って抱きしめてくる親友の由美ちゃん。 「入院とかで忙しいのも分かるけど、一言くらい連絡欲しかったよ」 と莉子(りこ)ちゃん。 「そうだよ~。急に連絡も取れなくなったら、誰だって心配するよ!」 と香織ちゃん。 「うん、ごめんね。……心配かけさせちゃって」 私は親友の由美ちゃんに抱きしめられながら、心配させてしまった事に肩を落としてしょんぼり項垂(うなだ)れる。 そんな私を見かねた親友の由美ちゃんは 「あー、もう!結果、大したことも無かったんだし、せっかくお見舞いに来たんだから楽しい話しよ!ね?」 とニッコリ笑って暗い雰囲気を変えようとしてくれているよう。 「あっ……そ、そうだよね!ごめんね、桜」 「ううん、私こそちゃんと連絡しなくって本当にごめん」 そう手を合わせてもう1度謝る。 すると一瞬ドアがガタっと鳴って、私の心臓は小さく跳ねた。 でも、ドアの()りガラスに人影は無く、風が犯人だと知って淋しいようなホッとしたような気持ちになる。 「あ、今大和(やまと)だと思ったでしょ? 大和(やまと)は部活で少し遅れるから後でくると思うよ」 さすが親友。 今の一瞬だけで分かってしまうなんて。 「そーなんだ……」 「大和、桜の事すっごい心配してたよねー」 「そーそー! 昨日なんて、ずっとボーッとしてて体育の時なんてサッカーボールを顔面で受け止めてたしね」 「え、あの大和が?」 「そうなのよ、あれはビックリしたね! 超運動神経の良い大和君のあんな姿、なかなかのレアだよねー」 そして友達同士で顔を見合わせたと思うと、ニヤニヤとした顔がこちらを向く。 「ほんと大和と桜、いい加減くっつきなよー。誰が見ても両思いなんだからさっ」 背中を勢いよくバシバシと叩かれる。 「はは。もぅ!そんな訳ないって言ってるでしょ~」 いつも言われる言葉に、つい苦笑いを浮かべてしまう。 「あぁ~!なんで信じてくれないのぉ~絶対脈ありだって!というか、あれで脈ナシなんて有り得ないから!」 「大和とは小さい頃から一緒だし、そんなのあるわけないよ」 「じゃあなんで桜は好きなのよ」 「そっ……それは……大和は優しいし、かっこいいから……」 「桜、言ってる事矛盾してるって気付いてるの? っていうか、ノンビリしてると誰かに取られて後から後悔するわよー。 あいつ、意外とモテるしね」 「へー、そうなんだ」 「そーよ。知らなかったの?」 「うん……」 平気なふりをして、頭の中では誰かに取られる様子を想像してしまい、胸が苦しくなった。 でも、今の私は何も出来ない。 勇気を出して動いた所で、優し過ぎる大和に迷惑がかかるのが目に見えているから。 結局あの後ーー 大和は病室に現れなかった。
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