余命宣告

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友達が帰ってしまった病室は酷く静かで、時計の秒針の音が嫌になるくらいに耳に入って来る。 チクタクと鳴る度に、1歩づつ死に向かっているんだと感じてしまう。 お医者さんの話では、この命はあと5日くらい。 少なすぎる。 やりたい事なんて山ほどあったのに。 でも、残り僅かだと分かっているのに何もやる気が起きない。 親が置いて行ったノートパソコンは全く手つけずのまま。 あんなに時間無制限で触りたかったSNSも、動画もーーいらない。 私はただ死を待っているかのように、このベットに横になっている。 そんな時、ふとサイドテーブルの上に載っているノートが目に入った。 「こんなのあったっけ?誰かの忘れ物?」 手に取って確認すると、なんの変哲(へんてつ)もない、ただ横線だけが入っているノートで、表紙も中も何も書かれてはいなかった。 その時ふと、あることを書き(つづ)りたくなってペンを取った。 余命宣告をされてから、何かをしたいと思ったのは初めての事だった。
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