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「もう止めよう、母さん。
私達がしてきた事は、間違っていたのかもしれない」
そういうと何かを言おうとした口を噤み、初めて黙り込む母親。
「桜が最後はあの子と一緒にいたいのなら、そうしてあげよう」
そう言って母親の肩に手を乗せる。
「何よ何よ!あなたも、私が……桜の為を思ってやってきた事が、間違いだっていうの……?」
「きっと、そうだったんだね。こんなになるまで私達は気付かなかったんだ。それをあの子は気付いて見方でいてくれていたんだね」
淋し気な父親が俺をじっと見る。
「先生から病状や現状は聞いたよ。ありがとう。桜を、よろしくお願いするよ」
「……はい。任せてください」
「本当にありがとう。一応、桜の気が変わった時の為に近くにいるようにするから、もし何かあったらここに連絡してくれるかい?」
そう言う父親は今に泣きそうな顔で笑って、携帯電話の書いた名刺を渡す。
そこには超一流の企業名が入っていて、肩書まで付いていた。
崩れ落ちて泣く母親の肩を抱いて去っていく父親の背中に胸が痛んだ。
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