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「桜、一体どうしたんだ?」
そう声をかけられて、気付くと私と大和は学校の近くの公園にいた。
「あ、ごめんっ……」
無我夢中で全く意識をしてなかった手に、急に意識が働き始める。
慌てて繋いでいた手を離すと、今更恥ずかしさが込み上げてきた。
その時、強い風が吹いて、公園の並木がいっせいに葉を鳴らせた。
頬に感じる風
耳に入る心地いい音
手に残る大和の温もり
やっぱり、夢なんかじゃない。
「大和、こんな迷惑をかけるような事をしてごめんね。
でも……一生のお願いだから、今から二週間、私のワガママに付き合ってほしいの」
なんの理由も告げず、こんなお願いが通るとは思っていない。
なのにーー
「いいよ。桜のワガママなら、なんでも聞いてやる」
大和は昔から優しかった。
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