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神はいるぞと、口を開きかけたルクルを、ティアがやめろと制した。「ルクル、今はおまえの出る幕じゃねえ」
「……でも」
「前にも言っただろ。おれたちはまだ神じゃない。だからおれたちは、人間に無闇やたらと干渉しちゃだめなんだ。……求められるまではな」
「わかった、ごめん」
ルクルは素直に頷いた。優吾と淳平の二人は、ルクルたちの存在に気づくこともなく、黙って空を見ていた。考え事をしている人間は、空を見上げていることが多い。その理由も、いつかは知りたいと、ルクルは思った。
しばらくして、優吾が突然、わああっと叫んだ。何の前触れもない彼の大声に、淳平も、そしてルクルとティアもとびあがった。
「あーびっくりした。いきなりどうしたんだよ」
心臓に手をあて、驚いた表情で、淳平が聞いた。
「俺は決めたぞ。絶対にレギュラーの座を、取り返してやる。そのためには一瞬たりとも時間を無駄にはできない。淳平、練習付き合ってくれよ」
「おう、任せとけ」
二人して顔を見合わせ、ニッと笑うと、彼らは勢いよく立ち上がり、体育館の中に引っ込んでいった。
「な? お前の出る幕じゃなかっただろ」
体育館の扉が閉まった後も、ルクルはしばらくそこを見つめていた。ティアの声かけに、無言のまま頷く。
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