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ルクルは駆け出していた。窓枠からジャンプして、ティアも後を追う。ルクルは考えた。
おそらくあの人間の仲間たちは今、体育館の中で部活動をしている。だが彼は一人だけその輪を外れ、落ち込んでいるようにみえる。
知りたい。彼がどんな理由で、どんな気持ちでそこにいるのか、知りたい。
逸る気持ちを抑えるのに必死だった。ルクルが習得した能力のひとつを使えば、瞬時に男子生徒の元へ移動することができるのに、彼はそれを忘れていた。階段を駆け降りて、廊下を走る。風をきるように、その速度は次第に増していく。ティアもパタパタと後を追う。こんな時、自分が猫の姿で良かったと、彼は思うのだった。仮に亀の姿に変えられていたとしたら、ルクルと行動をすることはかなわなかっただろう。
校舎の外に出ると、男子生徒はまだそこにいた。夏の灼熱の日差しに焼かれて、彼はぼたぼたと汗を垂らしている。汗は皮膚を伝い、コンクリートに落ち、彼のいる周りにまだら模様を作っていた。
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