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「自分なりにとても頑張ってたつもりだけど、何が足りなかったんだろうな」
語尾が震える。優吾は、目に溜まった涙をごしごしと拭った。
「笑っちまうよな。弟に、レギュラーの座を奪われるなんて」
淳平は何も言わず、空を見上げていた。優吾が長く重いため息をつく。「兄として、弟の成長を嬉しく思う気持ちとさ、俺よりあいつの方が才能あるんだって思い知らされた敗北感が、こう、ぐちゃぐちゃになっちゃってさ……」
優吾は言った。弟なのに、あいつはいつも俺の前を走っていく。最初は同じ足並みでも、その背中はどんどん遠ざかっていく。俺の居場所をどんどん奪っていく。俺は、あいつのことが憎くて、妬ましくて、羨ましい。
「どれだけ努力しても、あいつを超えられる気がしないんだ」
「……オレは、優吾がオレたちの誰よりも無茶苦茶努力してきたってこと、わかってる。だからさ、そんな悲しいこと言うなよ」
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