八百万のキュリオシティー

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 ルクルは、彼らのやりとりをもっとよく見ようと、さらに二人に近づいた。人間は不思議な生き物だ。言語を巧みに操り、相手に想いを伝える。想いが現れるのは、言葉だけではない。その表情、その仕草。耳で聞くだけでなく、目で見ないと、彼らの真意を図ることが難しいこともある。  もっと見たい。もっと知りたい。彼ら人間の全てを。僕はこの世界の何もかもを知り、統べなきゃならないのだ。ルクルは、自分の胸が高鳴っていることに気づいた。自然と頬が緩む。 「カミサマって、馬鹿だよな。何も見てねえ。足掻いても足掻いても、報われないことばかりでさ」  淳平が腕を伸ばし、手のひらを空に向けた。いくら手を伸ばしても、掴むことのできない空。つられてルクルも、天を仰いだ。空の色が青だと最初に言ったのも、人間だった。 「そんなもんいるわけねえだろ」  優吾が一笑する。それに俺は、神の助けなんかいらねえよ。  
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