八百万のキュリオシティー

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 最も身近な者の心を解きほぐせ。御偉人からの言霊は、確かにそう言っていた。この扉が現れたということは、すでにそれを成し遂げたのだといえる。  ルクルは首を傾げながら、「まあいっか」と呟くと、扉を開いて、中に入った。 「おれもおまえを全知全能の神に仕立て上げられるように、頑張るよ」  ルクルの足元をついて歩きながら、ティアがボソリと言った。あいにく、ルクルには聞こえなかったようだ。彼は部屋の壁際にそびえる書棚の前に立ち、何か書物を探しているようだった。指先で本の背表紙をなぞりながら、口を開く。 「なあなあ、ティアは、弟の僕に、嫉妬したことはあったりするの?」  静寂が訪れる。猫はそっぽを向いたまま、何も答えなかった。
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