八百万のキュリオシティー

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 ルクルたちのいる廊下は、しんと静まり返っていた。窓も、教室の扉も全てが閉まっており、ティアの言うとおり、人間がそこにいる気配はない。ただ、遠くからくぐもった歓声が聞こえてくる。校舎の外で、この学校に通う生徒たちが、部活動をしているんだと、その声を聞いたルクルは考えた。  窓の外に目をやる。ルクルたちがいる校舎の向かいには、体育館がそびえており、窓や扉が開け放たれていることから、そこに人間たちがいることは容易に想像ができた。ルクルは窓ガラスに顔を近づける。先ほどから聞こえてくる歓声は、体育館から響いているものだと確認した。 「ん? ルクル、あそこ見てみろ」  窓枠に飛び乗ったティアが、顎をしゃくる。その先に視線をやると、一人の男子生徒が目に入った。体育館の側面に、一つだけ閉まっている扉があり、彼はその前にある三段の階段に腰掛けていた。着用している、真っ赤な半袖のユニフォームが鮮やかに映えている。背を丸め、ユニフォームからのぞいている褐色の膝をきゅっと縮こめて、自分の腕の中に頭をうずめていた。 「あ、おい、待てよ!」
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