第十話 ミャーコには見えてる事件

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 事件はあっけなく解決した。  なんだ。犯人はまたまた三村くんかぁ。そう言えば、ミャーコに嫌われてるもんな。 「あっ、でもさぁ。じゃあ、鏡に映ってたのはなんだろ?」  僕は先日の鏡にうなるミャーコの説明をした。猛がポンと僕の肩をたたく。 「かーくん。猫は鏡に映ってるのが自分の姿だとわからないんだ」 「へえ。そうなの?」 「だからな。ミャーコはかーくんがよその猫をダッコしてると思って、ヤキモチ妬いたんだよ」 「うぎゃーっ! ミャーコが可愛すぎるんだけどッ!」  なんだぁー。それだけのことか。安心。安心。オバケも泥棒もいなかった。一件落着!  ……ところがだ。  この事件は、これで終わりじゃなかったんだ。むしろ、ここからが本番ね。  翌朝。今日は土曜日。  僕が仕事に行くために十時ごろに起きてくると、まもなく、ミギャーッと、またもや興奮したミャーコの声が庭から響いた。  何? また三村くん? 昨日、泊まっていったからね。朝から元気だなぁ。ミャーコとランニングか。でも、庭が荒れるからやめてほしい。  僕は居間をよこぎって縁側にむかった。ガラリとガラス戸をあける。 「三村くーん。朝からさわぐのやめてよねぇ」  走りまわるミャーコ。  でも、人影は見えない。  すると、キッチンのほうから声がした。 「かーくん。なんやいな? なんか呼んだか?」 「えっ?」  そんな、バカな? なんで三村くんがキッチンに? じゃあ、ミャーコは追いかけて……?  ゾォ……ッ!  じりじりあとずさりながら、僕はキッチンにとびこんだ。三村くんが猛と二人で昆布茶をすすってる。 「おう、かーくん。なんやってん?」 「な、なんでもない……」  やっぱり、おかしい。  三村くんはここにいた。  なら、ミャーコは追いかけてたんだっ?  もちろん、この時間、同居人の蘭さんはまだ就寝中だ。さっきベランダに洗濯物干すとき、それは確認ずみ。  だとしたら、この家にはほかにもう誰もいないんだけど。  お、お、お……オバケ? 「かーくん。早くしないと遅刻するぞ?」 「あっ、うん。行ってきます」  時間が迫る。しょうがないんで、僕はとりあえず家を出た。  でも、出がけにさ。変なことに気づいた。門のかんぬきが外れてる。また、猛だな。あいつ、朝方に新聞とりに行くとき、たまにかんぬき、かけ忘れるんだよな。  家を出ると、前を歩いていく小学生の集団が、うちのほうを見ながら、コソコソ話してるのが聞こえた。 「あそこ、化け猫がおるんやって」 「えっ? ほんま?」 「うん。ショウくんが見たって」 「そんなんおるわけない」 「ほんまやって。あそこ、草ぼうぼうで絶対、なんか出るやろ」  むーん。小学生たちのあいだで、うちがお化け屋敷認定されてる? たしかに、ちょっと庭木の手入れとかサボってはいた。  気にはなるけど、これ以上遅くなると電車をのがしてしまう。僕はあわてて駅へと走った。
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