第十一話 異世界から来たスライム事件

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 なんでもオバケだと思う僕。  なんでもファンタジーにしたがる三村くん。  ただひたすら、おびえる蘭さん。  みんな、ポンコツだ。  やっぱり探偵を任せられるのは兄ちゃんしかいない!  だけど、猛はアクビを連発してる。 「とりあえず、明日にしようぜ。眠いよ」  ダメだ。探偵が事件から離脱した。  僕らは怖がる蘭さんをなだめすかし、一階の居間で仕事してもらうことにした。三村くんは猛の部屋に強制移動だ。  朝になった。  夜中にとびおきたせいで眠いのなんの。  僕は急いで洗濯機をまわしといて、トースト一枚かぶりつく。 「兄ちゃん! 洗濯おわったら、ちゃんとベランダに干しといてね!」 「わかった」 「じゃ、行って——」  いや、まだだ。バラに水やってなかったな。ベランダに置いてある植木鉢のミニバラだ。去年、カナブンに根っこ食われて、ひと鉢、枯らしてしまった。めちゃめちゃ悲しい。残る一つは大事にしないと。  僕は出勤前のあわただしさのなかで、ジョーロに水くんで階段をかけあがった。  バラは水やりが肝心だ。水と肥料が大好きなので、毎日かかせない。それにけっこう虫が集まってくる。  今日も見といて正解だった。カナブンが咲きかけの花をかじってる! クソ! カナブンめ! イズミ(枯れた鉢)のかたき!  花が咲くと蝶やミツバチも来るし、カエルやてんとう虫も、よく見かける。今日はカエルはいないな。てんとう虫はアブラムシ食べてくれる益虫なんだよ〜。  僕はにっくきカナブンをビニール袋に入れて、ゴミ箱にほうりこんだ。害虫は駆除しないとね。 「じゃ、行ってきまーす」 「かーくん。帰りにバルサン買ってこいよ?」 「はいはーい」  って言ってたくせに、その日は仕事がバカみたいに忙しかった。すっかり忘れるもんだねぇ。人間ってさ。 「かーくん、お帰りなさい! バルサン買ってきた?」  玄関入った直後に、蘭さんのお出迎え。 「あっ……ごめん」 「忘れたの?」 「ごめんよぉ。明日はお休みだから、猛と買ってくる!」 「……しょうがないですね」  なんとも無念そうな蘭さんの顔を見て、僕は励ました。 「でもさ。ほら、グリーンスライムにはバルサン効かないかもだし?」 「そうですねぇ。そもそも、この世にスライムなんているの?」 「でも、スライムっぽいものを見たって言ったの、蘭さんだよね?」 「うーん。けっこうすばやかったし、机の下、のぞいたときには、影しか見えなかったんですよね」 「昼間は出たの?」 「そんなわけのわけらないものがいる部屋なんて、じっとしてられませんよ。今日は猛さんの部屋で寝ました」  すっかり猛の部屋が雑魚寝(ざこね)所に。 「猛。洗濯物、とりこんでくれた?」 「あっ、すまん。まだだ」 「ええー! ダメじゃん。夜になると湿気吸うんだよ」 「すまん。すまん」  僕は急いで二階へかけあがった。いつもなら、蘭さんの部屋は通らない。けど、外がすでに暗くなってるし、蘭さんは下にいるから近道して通らせてもらうことにする。  僕は照明のリモコンを手にとった。魔改造されて、蘭さんの部屋だけグレードが高い。明かりをつけた瞬間だ。  ピュン——  へっ? と、とんだ!  部屋のすみから物陰へ、何かがとんだ。  グリーンスライム……。  ほ、ほんとにいたのか!
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