夜風

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彼とは同じ職場だった。 部署は違うけどよく行き来がある。 お互いの部署の飲み会によく混ざって。 気づいたら彼の家で2次会をしていた。 「これって」 この後そういうことになる? 正直そこは考えてなかった。 警戒心が無さすぎだ。 自分が馬鹿馬鹿しく思える。 「なんか急に緊張してる?」 彼は目敏くそれを見つける。 「酔いが醒めた。  帰る」 「…送ってくよ」 あっさり引き下がる。 それ目的じゃなかったのだろうか。 だとしたら申し訳ないことをした。 「大丈夫…」 立ちあがろうとして。 ふらついた。 「気をつけて」 腕を掴まれた。 「本当に帰れる?  俺隣の部屋にいるから、  ここで寝たら?」 地面がコンニャクのように波打って。 うまく立っていられない。 「手え出さないなら、そうする」 「そうしろ」 言うなり私をソファに投げて、上に毛布を被せる。 「おやすみ」 頭を撫でられた。 彼はその気はない。 私を好きにはならないし、欲求の吐け口にもしない。 そう思うから。 私は彼と付き合おうと思えた。
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