夜風

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彼女は仕事中は、お客さん思いで同僚にも丁寧な社員さんという感じだ。 でも酒を飲むと少しだけその皮が剥がれる。 仕事の愚痴を思わず垂れると。 「わっかるわ〜」 激しく同意してくれる。 そうして酒と愚痴が進むと、ちょっとずつ毒舌になっていく。 クレーマーやめんどくさい上司、勘が悪い後輩について、その舌で一刀両断してくれるのだ。 気を遣わなくていい。 自分のことを良く見せる必要もない。 好いてもらう必要もない。 そう思ったら、楽だった。 自分が女を好きになれないのは、女だからじゃないと思う。 頼られて、求められるのが嫌だからだ。 彼女はそれをしない。 だから彼女を愛せると思ったのだ。
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