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夏の夜。
静かな住宅街。
国道沿いのコンビニへ歩く。
虫の声。
彼と。
何度一緒に歩いただろう。
愛してなんかいないと思ってた。
ただその時だけ一緒にいるのが楽しくて。
その刹那の連続であれば良かったのに。
もうコンビニに着いてしまった。
汗をかいた。
アイスを食べたい。
棒のアイスを買って。
開けて袋を捨てて。
店を出る。
夜道を歩く。
アイスなんか食べながら歩いて。
転んだら棒が喉に刺さっちゃうよね。
想像した瞬間。
悪寒がしてアイスを口から離す。
用水路の柵に腰掛けてアイスを食べる。
冷たい。
甘くて喉が乾く。
帰ったらお茶を飲みたい。
溶けたアイスが手を伝う。
ペタペタする。
右手はもう何も触れないな。
風が吹く。
用水路に落ちたら死ぬのだろうか。
泳げるから死なない?
でもどこまで流されるんだろう。
川まで?
ダムまで?
海まで?
どこで息絶える?
想像して怖くなって。
柵から降りる。
ため息をついて。
振り返る。
「…来ないでって言ったのに」
「ごめん」
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