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やっぱりずるい人だと思った。
とにかく身勝手すぎる。デリカシーの欠片もない。実の娘に対する配慮というものが全然感じられない。まったく、なにひとつ変わらないひと。
そして、そういう私も大概だ。「高校入学のお祝いに琴葉になにか買ってやろう」なんて言葉にそそのかされて、こんなところまでやってきた自分の能天気さにも腹が立つ。裏があるに違いなかった。父はもともとそういう人種なのだ。なぜそんなことにも気づけなかった。いや、気づいてはいた。それでもやはり物欲が勝ったのだ。卑しい自分が心の底から憎い。
父と、その父が連れてきた見ず知らずの少女は、いまも楽しそうにメリーゴーランドに興じている。そんなふたりを見ているだけで、ぐつぐつと煮える鍋のように、なんともいえない怒りがこみ上げてくる。
父から集合場所に指定されたのは、地元で人気の複合型アミューズメント施設。遊園地と商業施設をごちゃ混ぜにしたような施設で、ちょうど私が生まれた年に建設されたらしい。両親が離婚する前までは、よく家族で遊びにきていた。私にとっては、大切な思い出の場所。
──それなのに、ホントに最低。
父と一緒に白馬にまたがり、お姫様のようなフリフリのワンピースを着たその少女は、名を「きらりちゃん」というのだそう。……やれやれ、なにが「きらりちゃん」だ。きらりどころか、おかげさまでこっちは思いっきりどんよりとした気分だ。
父の再婚相手の連れ子で、今年から小学一年生だというその少女は、戸籍上では私の義妹にあたる。存在自体は知っていたが、まさか実際に会わされることになろうとは──。
「きらりにも入学祝いをしてやらないといけないし、お互い姉妹なんだからこの機会にと思ってな」と父から出会いがしらに聞かされたときには、思わず倒れそうになった。
会ったこともない、血も繋がっていない義妹の入学祝いに、なんで前妻の娘が付き合わねばならないのか。お互い姉妹なんだから? この機会に? 意味不明すぎて笑えてくる。
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