桃音神社

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モモちゃん 私の宝物 私が3歳になる前からずっと一緒 一緒に車に乗って 一緒にテレビを見て 一緒に寝て そうしてもう15年以上になった モモちゃんを机に置くと 勉強もちょっとだけ頑張れる モモちゃんは私を応援してはくれない 私に紅茶を出してはくれない ただ私の手の届く位置にいるだけ 私がそれを見て勝手に元気づけられてるだけ 昔よりも色がくすんだ 目のボタンを縫った糸が緩くなった 他の子達よりもゴワゴワになった 体に小さな穴が空いた だけどモモちゃんの表情が変わることはない 耳を折ると少し悲しそうに見えて 目と目の間を指で押すと怒ったように見えて それを見て私は笑う モモちゃんは生きてはいない 綿と布と糸とボタンで出来た DVDのおまけのぬいぐるみ その名前も私が付けたものじゃない モモちゃんは私のもの 生きていたら困るのだ 生きていたら物じゃなくなるから 私の元から離れてしまうかもしれないから 私はモモちゃんが好きで モモちゃんも私が好きで 私たちはこれからもずっと一緒で 私が死んだら一緒に燃えて灰になる モモちゃんが生きてないから叶う望み この世で唯一永遠が保証された幸せの形 独りよがりで幼稚なこの愛が 私は愛おしくて仕方がない
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