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「大丈夫?」
「え?」
「疲れてるようだから」
僕が彼女に何か言う前に、彼女が訊いて来た。僕は何と返して良いのか答えあぐねていた。
「困ったね」
在り来たりな、無難な話題を僕は振った。本島と連絡が絶たれて……家族は本島にいた。
「そうだね……家族が心配だな」
小さく零す彼女は、儚げに見えた。
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「お二人さーん!」
友人の僕たちを呼ぶ声が、屋上に響き渡る。……元気だなぁ、アイツ。
「────っはーっ、はーっ。捜したよ、もぅっ! 何でここにいるんだよぉ! 順番! 俺たちの順番、来たよ!」
「わかってるよ……そうは言ったって、順番が来ても並んで、また一時間掛かるんだろう? 出発ギリギリで良いんじゃない?」
動くの腕っ弛い。座り込んでいる僕がぼやくと、友人は信じられないものでも見るように、 「はぁあっ?」 大声を上げた。
「うっかり乗り遅れたらどうすんのさ! もうやだよ俺帰りたいー!」
「あーもー、わかったわかった」
「また! そうやって! ……お前非道くない? 何でそんな雑なの! 昔はもうちょっと構ってくれたのに!」
「この騒動で年食ったんですー」
嘘は言っていない。僕が適当にあしらっていると、わざわざしゃがんで、僕の肩を掴みがくがく揺する友人。しかし僕は動じない。慣れた。てか、飽きた。僕の横で、僕と友人の問答を見ていた彼女は。
「ふふっ」
笑いを洩らしていた。くすくす笑う彼女に一旦友人は静止したけれど、再び僕を揺すった。
「ほらー! 笑われたじゃんかぁー!」
いい加減、ウザい。煙草欲しくなるわぁ……トーナメント参加者には成人もいてね、ちょっとだけ覚えちゃったんですよ。っても、精神年齢はともかく、僕は未成年なのでもうしばらく吸えないけども。仕方ない。
僕は口寂しいのを持っていた飲料で誤魔化して、友人が鬱陶しいので相手することにした。
「……。良かっただろ。
やっと、帰れるんだから」
現在、“あの一箇月”から数日が経っていた。
彼とヤツが市長をぶっ飛ばし、少女が膜と黒い染みを消して、僕はようやく、一箇月を終えたのだ。
何度も失敗したのは、これが、この『世界』の正解だったから。『世界線』? の、が正しいのか。
マスコミの過熱報道とネットの御蔭で、ヤツは市長のせいで凶行に及んだと拡散され、警察にも協力的なことも有り賛否両論であるけれども、世間の同情を得たらしい。市長? 引き渡して警察に捕まってから知らない。興味無い。
非実在少女は、国の管理下に置かれたヤツと共に、現在いろいろ問題が在るので存在は伏せられ、実体を消去し、システムと分離、ヤツの用意した機械に隔離され……保護されているそうな。
多少窮屈でも、大好きなお兄ちゃんといられると在っておとなしくしているみたいだ。
「お前は、本当に食えないヤツだし、正直不気味で疑わしいヤツだったけど、悪いヤツじゃないと思ってた」
隣高の彼や彼のチームとは、落ち着いたら本島で会おうと約束した。
「……ちょっとだけ、お前と組むのは博打かと考えたことも在ったが、最終的に信じて良かった」
別れる際、彼に言われた言葉だ。放っとけ。礼を言ってるのか貶してるのか。
「もー行こうよー! 席取られちゃうよー」
「バスの? 橋渡って駅に行くまでだろうが」
「嫌だぁー! 疲れたー!」
「纏わり付くな! 鬱陶しい!」
「ふふふっ」
引き剥がしても、引き剥がしても、抱き着く友人は懲りず絡み付いて来る。ゆえに、僕も懲りず振り払う。彼女は笑うだけで助けてくれない。くそ。
「わーかった! 行くよっ」
しつこい駄々っ子に仕様が無いと、僕は腰を上げた。あー、しんどっ。
「いえぇーい! 帰ろっ、帰ろっ」
友人は何かガッツポーズ付けて、一人盛り上がっている。僕は彼女へ手を差し出す。彼女も僕の手を取って立ち上がった。
まぁ、友人は友人で、トラウマなのかもしれない。全部、屋上にいたときから始まっていたんだ。一刻も早く、立ち去りたいのかな。
気持ちは、よくわかる。みんなで出入り口へ向かった。
友人、彼女、僕と順に屋上を出て行こうとして──────僕は、ノブを握ったまま後ろを振り返った。
「……」
殊更、感じ入ることは無かった。余りに濃密過ぎたんだろう。ぼんやり立ち尽くしていると。
「おーいっ」
友人に呼ばれた。僕は答える。
「うん、行くよ」
僕は、出入り口を潜り、扉を閉めた。
“おめでとうございます”
“ボーナススキル、発動します”
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“システム、セーフティモード起動”
“バグ修正します”
“システム修復開始”
“システム回復”
“システム起動します”
“システム、正常に起動”
“システム、正常に稼動を確認”
“おめでとうございます”
“エクストラステージ、開始致します”
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