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私とて命は惜しい。まだこの若さで死にたくはない。
それにしても、恐ろしかった。あの怖さは同じ体験をした者にしか理解出来ぬであろう。しかしわけのわからぬ恐怖に押し潰されそうな私の気持ちなどお構いなしに、宇宙人はテレパシーを駆使しながら、私の頭脳へと直接語り掛けてきたのだ。
「十五年の時を経てから立つのだ。宇宙のために。三十歳の誕生日を迎えた後に雨音が聞こえたら、それが合図だ。合図と共に行動せよ。宇宙の平和のために、邪悪な地球人を見つけて徹底排除するのだ」
私は偉大なる宇宙人によって選ばれし聖なる戦士だ。聖なる戦士にはプロテスタントの白人以外が選ばれることなどあり得ない。なぜなら我々白人こそが地球の正義であるからだ。黒人とアジア人とヒスパニックは邪悪の権化なのだ。邪悪だ、邪悪だ、邪悪だ!
私は全人類から選ばれし聖戦士として、偉大なる宇宙人と血の契約を交わしたのだ。聖戦に際して必ず守らねばならぬ重要事項を、私は宇宙人から事細かに聞かされた。無論それは言葉ではなくイメージとして、テレパシーを介して極めて効率よく行われた。その内容もまた、やはりここには明かせない。くどいようだが、私には守秘義務がある。守秘義務は何があろうと守らねばならぬ。
ともかく私は、宇宙人と初めて遭遇した15歳の誕生日から長期間に渡ってUFOから厳重に監視され続けている。監視はかれこれ十六年にも及んでいる。
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