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鈍い疲れが下半身に広がっていた。起き上がろうとする気概すら湧いてこない。お前は体力がなさすぎると幼馴染に呆れられたことを思い出す。あまりに貧弱な己の身体に、蓮は乾いた笑いを漏らした。
「何笑ってんだよ。元気そうだな」
「………そう見える?」
濡れた髪を乱暴に拭いながら男が歩いてくる。蓮は気だるげに寝返りを打ち、微かに目を細めて見せた。目があった男は「お前、わざとやってんだろ」と眉を顰める。
「すっかり魔性に育っちまったなあ。最初はあんなに可愛かったのによ」
「俺は優秀だからね。物覚えも良いんだ」
喉を酷使しすぎたせいで、掠れた声しか出てこない。あーうーと発声練習をしている蓮に男がのしかかってくる。どうしてそんなに元気が有り余っているんだ。蓮が呆れを込めて視線をやると、「どうして欲しいんだっけ?俺は馬鹿だからすぐに忘れちまう」と男が意地悪そうに笑みを深めた。
返事代わりに、蓮は重たい腕を持ち上げ男の背に回す。眉尻をわずかに下げ見つめ返すと、男は「くそっ」と小さく舌打ちをした。
「とんだ優等生だな」
「……なあ、遠慮はいらないから、」
酷くして、と言いかけた口を男が塞ぐ。
言われなくても。切羽詰まった掠れ声を聞いて、蓮は安心したように身体の力を抜いた。
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