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死を招くもの
弟が死んだ。
葉山香鈴は、妹からの電話で弟の大智が死んだのを知った。
「……明日、朝一で帰るから」
ただならぬ様子で電話を切った香鈴に、夫の周平が「何かあったの?」と訊いてきた。
あまりにも突然の出来事で、香鈴は何も答えられない。
今朝まで、香鈴は周平と正月休みを利用して、香鈴の実家に帰省していた。
雪の降る中、車で札幌に着いたのは、つい数時間前のことだ。
実家を出発する時、大智は元気な姿で見送ってくれた。
香鈴より五つ下の大智は、まだ二十三歳だった。
大智は高熱と、腕から全身に広がる腫れに、激しい痒みを訴えていたらしい。
救急車で病院に運ばれたが、そこで大智は息を引き取った。
妹が医師から聞かされた死因は……原因不明だった。
翌日の早朝。
香鈴は再び、周平と実家に向かうための準備をしていた。
九時になったら、会社に休暇の連絡を入れなくてはならない。
正月の連休明けに休暇を取るとなると、イヤミを言う上司の顔が頭に浮かぶ。
香鈴は、札幌市内に五店舗ある飲食店を経営する会社で、経理の仕事をしていた。
店舗の営業は年中無休だ。
ただでさえ連休明けは忙しく、休めば休んだだけ仕事はたまっていく。
上司がイヤミを口にするのも無理はないが、連休明けに休暇を取るのは、今回が初めてではなかった。
喪服を用意するのも、この一年半で四度目だった。
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