死を招くもの

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 一昨年のお盆は、祖母が死んだ。  去年の正月は、父が病死。  その年のお盆は、母が事故死した。  そして、今度は……弟だ。    いずれも連休で香鈴達が帰省し、実家から札幌に戻ってきた日の夜だった。  祖母は、夜も早くに寝たあと、トイレに起きた。  トイレから戻り、部屋の入口で倒れたのを家族が発見した。  いくら高齢とはいえ、帰省した時は、歳の割に足腰も丈夫で元気そうに見えた。  祖母の葬式で、香鈴が母から言われたのは「お盆に香鈴の顔を見て、安心して逝ったんだよ」だった。  父は、その少し前から糖尿病を(わずら)っていた。  医師から止められていた酒も、香鈴達が帰省した日だけは、母の許可を得て嬉しそうに飲んでいた。  そのせいで、体に負担を掛けてしまったのかもしれない。  母は、夜になってスーパーへ向かう途中に、交通事故に()った。  その時、弟は仕事で会社に行き、妹は夏風邪で寝込んでいた。  帰省した日、確かに妹は体調が悪そうに見えた。  運転ができない母は、いつも近所に行く時は自転車だった。  ただ、家族の死には、どれも不思議な共通点がいくつかあった。  祖母は、顔が赤く腫れていた。  倒れた時に、顔をぶつけてしまったのだろうと言う母に、妹と弟は、そうは思ってはいなかったようだ。  父の時は、母と同じベッドで眠りに就いたあと、隣でモゾモゾとしている父に気付いた母が布団をめくった。  すると、父は無意識に足を掻いていたそうだ。  その足は、赤く腫れあがっていた。  医師が言うには、急激に血流が悪くなったせいで、むくんだのだろうとのことだった。  母も顔と手が赤く腫れていた。  事故に遭った時、母は顔の周りを手で払いながら、急に車の前に飛び出してきたそうだ。  母を()いた運転手が、そう言っていた。  今回の大智もまた、腕から全身に赤い腫れが広がっていた。  全員に共通するのは、赤い腫れと、香鈴達が実家をあとにした日の夜に死んだこと。  そして、全員が死の間際に「椿(つばき)が……」と口にしていたらしい。
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