47人が本棚に入れています
本棚に追加
一昨年のお盆は、祖母が死んだ。
去年の正月は、父が病死。
その年のお盆は、母が事故死した。
そして、今度は……弟だ。
いずれも連休で香鈴達が帰省し、実家から札幌に戻ってきた日の夜だった。
祖母は、夜も早くに寝たあと、トイレに起きた。
トイレから戻り、部屋の入口で倒れたのを家族が発見した。
いくら高齢とはいえ、帰省した時は、歳の割に足腰も丈夫で元気そうに見えた。
祖母の葬式で、香鈴が母から言われたのは「お盆に香鈴の顔を見て、安心して逝ったんだよ」だった。
父は、その少し前から糖尿病を患っていた。
医師から止められていた酒も、香鈴達が帰省した日だけは、母の許可を得て嬉しそうに飲んでいた。
そのせいで、体に負担を掛けてしまったのかもしれない。
母は、夜になってスーパーへ向かう途中に、交通事故に遭った。
その時、弟は仕事で会社に行き、妹は夏風邪で寝込んでいた。
帰省した日、確かに妹は体調が悪そうに見えた。
運転ができない母は、いつも近所に行く時は自転車だった。
ただ、家族の死には、どれも不思議な共通点がいくつかあった。
祖母は、顔が赤く腫れていた。
倒れた時に、顔をぶつけてしまったのだろうと言う母に、妹と弟は、そうは思ってはいなかったようだ。
父の時は、母と同じベッドで眠りに就いたあと、隣でモゾモゾとしている父に気付いた母が布団をめくった。
すると、父は無意識に足を掻いていたそうだ。
その足は、赤く腫れあがっていた。
医師が言うには、急激に血流が悪くなったせいで、むくんだのだろうとのことだった。
母も顔と手が赤く腫れていた。
事故に遭った時、母は顔の周りを手で払いながら、急に車の前に飛び出してきたそうだ。
母を轢いた運転手が、そう言っていた。
今回の大智もまた、腕から全身に赤い腫れが広がっていた。
全員に共通するのは、赤い腫れと、香鈴達が実家をあとにした日の夜に死んだこと。
そして、全員が死の間際に「椿が……」と口にしていたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!