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広い仏間で、大智は真っ白な布団に寝かされている。
明日の葬儀には、会社関係者や友人、親戚一同が参列に来る。
今夜の通夜は、自宅で家族だけで過ごすのだ。
「大智……」
目を覚ますことのない弟に、香鈴の頬に涙が伝った。
なぜ、大智までもが死ななくてはならなかったのか?
「お姉ちゃんが帰ってくるたびに、誰かが死んでる」
隣に座った麗奈が、ボソリと呟いた。
それに、香鈴は何も言えなかった。
言えるわけがない。
実際、その通りだった。
「私、明日の準備があるから。お姉ちゃんは、ロウソクと線香が消えないように見てて」
麗奈は香鈴と目も合わせず、仏間から出ていった。
廊下を挟んだリビングで、麗奈は電話をしながら忙しそうにしている。
「疫病神、なのかな……私」
香鈴は、大智の枕元に置かれた小さな祭壇を見つめた。
線香の細い煙が、天井に向かって伸びては消えていく。
「そんなこと、あるわけないじゃないか。ただの……偶然だよ」
周平は、目に見えない不可思議なものは信じないほうだった。
しかし、これらを偶然とするには、あまりにも重なり過ぎている。
周平の顔には陰りがあった。
香鈴もまた、自分が帰省したあとに家族が相次いで亡くなるという事態に、いくら否定されても不安を隠せずにいた。
今、家族と呼べるのは、妹の麗奈だけだ。
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