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「よーし、OK! 今日はここまでにしよう! 2年も3年も、後は切り上げて帰ろう!」
放課後、部長の声を合図に放課後の第2音楽室に響き渡っていた楽器の音が止み、部員たちが後片付けをして帰宅の準備を始める。既に時間は18時を回っていて、他の部活はほとんど帰宅した後だった。
僕が所属している軽音楽部は、2年生が4人、3年生が4人ずつと、合計8人で構成されている。それぞれの学年にボーカル、ベース、ドラム、ギターの担当で構成されていて、学校の文化祭や街のイベントで発表している。
ちなみに、僕はベースを担当していた。
「拓海、ちょっと残って練習していって良い?」
「また居残りか? あまり頑張り過ぎないようにな」
「彼方、鍵お願いしていっても良いかな?」
「うん、大丈夫だよ。後、返しとく」
「私も帰って夕飯食べたら練習するわ。ベースの彼方だけ頑張っているのって、何か悔しいし」
部長でもあり、ドラムを担当している吉野拓海。
ギターを担当している鈴木佳織。
ボーカルを担当している藤咲美羽。
僕たちは1年生のときから一緒にメンバーを組んでいて、今まで色々なイベントに参加してきた。順当にいけば、秋に行われる文化祭が引退イベントになる。
「木梨先輩、お疲れさまでした〜」
「お先します〜」
「うん、お疲れさま」
3年生に引き続き、後輩である2年生もぞろぞろと帰宅の準備をして第2音楽室から出て行く。そして、部屋の中は一瞬にして静寂に満たされた。
僕だけしか残っていない第2音楽室に、低音のベース音が響いていく。他の誰もいないこの時間は、僕にとって自主練の時間だった。
元々僕は、軽音楽部に向いているような性格ではないと思っている。社交的でもなければ、人前に出ることも苦手としている。1年生のときに拓海に誘われたりしなければ、僕が今この場にいることはなかっただろう。こんな内気な僕を仲間として受け入れてくれているメンバーには感謝しかしていないし、そんな周りのメンバーに遅れを取らないよう、1番下手な僕が練習をする必要があった。
「あら、まだ残っていたの? もうすぐ昇降口も閉まるから、早く帰りなさいね」
「あ、はい。分かりました」
数十分ほど練習していると、顧問でもあり担任でもある山本先生が見回りに来た。先生はそのまま第2音楽室の前にある階段を上って、第1音楽室へと向かって行った。どうやら、上で活動している吹奏楽部はまだ部活を続けているようだった。
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