てるてる坊主は、誰かの死体。

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 地下鉄駅から地上に出ると、雨が地面を叩きつけていた。  散弾銃のような雨音がどこにいても聞こえてくる。  ああ、どうしてこんな日に限って雨が降っているのだろう。  私は雨粒が降り注ぐ曇天空を睨みながら、傘をさして小走りした。  待ち合わせの時間を過ぎて早二十分。待っているはずの彼女の元へ急ぐ。  向かった先は、ビル中にあるイタリアンレストランだ。最近オープンした店で友人たちの評判も良い。前々から行きたくて私から「ここにしたい」と言ったのに、当の本人が大遅刻してしまった。  店内に入って、雨に濡れた傘を閉じる。すると、すぐに店員さんが私に気づいてくれた。 「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」 「いえ、待ち合わせで先にひとり中にいると思うのですが……」  焦りのあまり少し早口になったが、店員さんは「こちらにどうぞ」とにこやかな笑顔で案内してくれた。  店員さんに連れられた席は景色の良い窓際の席だった。  高層ビルが立ち並ぶオフィス街。藻岩山まではっきりと見渡せる。夜に来たらきっと夜景も綺麗なことだろう。もしかすると、この席でプロポーズする人なんかもいるかもしれない。  そんな素敵な席なのに、待ち合わせていた人物――妹はテーブルを肘で突きながら、ぼうっと雨が降る外の景色を見ていた。
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