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雨宮美里は変わっている。不思議ちゃん、という言葉では片づけられないほどに。
かったるい授業が終わり、放課後をむかえた教室は、やれやれといった空気に満ちていた。
窓の外で繰り広げられる、雨の狂想曲のせいだ。
湿気がひどい。梅雨の季節をいやでも感じさせる。
「傘を差してもびしょびしょになるじゃん」
「今日も部活休みかよ」
「やべー、傘忘れたー」
「もう最悪~」
口々に愚痴が流れゆく中、雨宮美里は一人どこか意気揚々とした足どりで教室を去っていく。
あわてて俺も彼女のあとにつづいた。
雨宮は靴を履き替え、傘も持たずに暴雨へと突っこんでいく。相変わらずむちゃくちゃだ。
「待て」
という俺の言葉も届かない。
俺は傘を広げ、彼女を追う。
雨宮は雨の中を楽しげに駆けていた。小柄な体躯だが、両手が自由なこともあってか、なかなかに速い。
校庭の真ん中で立ちどまると、深呼吸をするかのように両腕を広げる。
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