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「雨宮」
ようやく追いついた俺の声に、雨宮が振り向く。肩より少し上で切り揃えられた黒髪から、しずくが垂れ落ちている。
「おまえ、また……」
夏仕様で生地の薄い制服は、ただでさえ透けやすい。濡れるとそれはさらに著明で……。べったりと肌に張りついた制服の下から、下着が浮かびあがっていた。
俺は目線をそらしながら、雨宮の上に傘をかたむける。
「いやー、この音もいいねえ。人工チックで」
激しく打たれるビニール傘を見あげ、雨宮はのん気に言う。
男子の俺がいるのに、恥ずかしげもなく雨宮は平然としている。
「いくらバカでも、そんなことしてたら風邪引くぞ」
「お? 心配してくれるの? 智也っち」
俺の忠告も効果はなく、雨宮はイタズラっぽい笑みを口もとに浮かべる。
「ちげーよ。クラスメイトのよしみだ」
「照れ屋だねー。まあいいや。智也っちもこの雨音を楽しもうよ」
一歩。雨宮は俺との距離を縮めた。同じ高校生とは思えないほどちっこい。小動物みたいだ。
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