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俺たちは肩を並べたまま、しばし雨音に耳をすませた。
ドドドドドドド。傘に穴が開きそうなほどの雨がつづく。
「いいのか? これ」
「うん。いいよー」
丸顔に上機嫌を貼りつけた雨宮を俺は理解できない。
雨宮は、雨音を聴くのが趣味だ。雨が降れば、傘も持たず夢中で雨中へ向かう。そんな彼女はすっかり変人の域である。
同じクラスになった最初は、その奇行に唖然とするばかりだったが、今じゃすっかり慣れてしまった。
ただ、なんだか心配なので、つい追いかけてしまう。決して好きだからというわけじゃなく、保護という観点からだ。誤解なきように。って、俺はだれに言いわけしてんだ?
「雨音はねー、一度たりとも同じ音が存在しないの」
にこにこしながら雨宮は語る。
「そのときの気分とかー、周りにあるものとかでー、ガランッと変わっちゃうんだよ。たとえば、うーん、同じ雨量でも森と都会じゃ別の音になるでしょ?」
そう説明されると、想像しやすい。場所が変われば、生まれる音もまた変化する。あたりまえと言えば、あたりまえだが。
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