Belgian chocolate~恋とフーガ 番外編2~

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「森田君にもあげる。こっちきて」 小さな、チョコレートの粒を、親指と人差し指でつまんでこっちを見る。 俺は毛布から出ずに上体だけゆり子に近寄せ、手を出す。 「はい」 と言うとゆり子は俺の掌にチョコレートを落とすふりをして 自分の口に入れ、いきなり首に腕を回す。 唇が押し付けられる。 口を開ける。チョコレートの匂い。 舌が重なる。 ゆり子の唾液と一緒に小さなチョコレートが入ってきた。 チョコレートが歯にぶつかり、カタ、と耳に響く。 ゆり子は素早く唇を離す。 首に腕を巻いたまま、俺の顔つきを、 いたずらっぽい笑顔でじっと見つめている。 俺は面食らったまま口だけもぐもぐ動かした。 甘い。 満足そうにゆりこがふふ、と笑う。 「おいしいでしょ?誘惑に負けて、食べちゃった」 「はあ…」 ゆり子は俺の首から腕を離し、座り直して下を向く。 俺も毛布から体を出してゆり子の隣に座りなおす。 「ゆうべはごめんなさい。素直にいただけばいいのに…ね。」 向き直り、じっと俺の目の中を覗き込むように 見つめて詫び、またうつむく。 何故か哀しそうだ。 引き寄せてやる。 そのまま頭を、肩につけてくる。 いつもの香りがする髪にほおずりし、背中に腕を回す。 「…おいしいです……チョコレート」 「うん…」
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