Belgian chocolate~恋とフーガ 番外編2~

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ゆり子は俺から、体以外何も受け取ろうとしない。 外で会う時は安くていかがわしそうな宿を ゆり子が予約してカネを出し、 何か食べたい時は、コンビニや弁当屋で買ったものを持ち込む。 ゆり子のアパートで逢う時は、夕食は別々に済ませ、朝だけ、 ゆうべのご奉仕の代償ではないのだろうがゆり子が作り、 一緒に食べていた。 俺の部屋へは来ない。 買い物をしたり映画や舞台を観たり、 どちらかの家で鍋をつついたり評判のいい店で食事をする などということはなかった。 それこそ、「大事な恋人」じみたことは、 ゆり子は注意深く、何一つしないよう気を付けているようだった。 好意を拒絶されたのに加えて 体だけ与えてくれればいいのだ、 と俺に分からせるために受け取らないのかと思うと 無性に腹が立って来た。 飼い猫だって俺よりは遠慮なく飼い主の懐に潜り込んでいる。 「そうですか」 ゆり子に背を向け寝ころぶ。 「俺…萎えました。今日はできません」 別に萎えたわけじゃないし、できなくないだろう。 拗ねるのはみっともないと思う。 でも今日は意地でも誘いにも命令にも従いたくない。 少し沈黙があって、足元あたりでゆり子の足音がした。 畳がかすかにへこむ。
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