12人が本棚に入れています
本棚に追加
水上 優里
私には3歳年上の腹違いの姉がいた。
優里に初めて会ったのは、彼女が13歳 私が10歳の時だった。
「司… 今日から一緒に暮らす事になった、お前の姉の優里だ よろしくな。」
父親の後ろから現れた彼女は緊張した面持ちでペコリと私にお辞儀をした。
あの日の光景は、今でも目に焼き付いて離れない。
背が高くスラリとした優里は白いワンピースを着て、大きな旅行カバンをひとつ抱えていた。
私は初めて会った姉の彼女を美しいと思った。
恥ずかしくなり私は、挨拶もそこそこに2階の自室に逃げ込んだ。
優里は父の実子だったが、いわゆる愛人の娘だ。
優里の母親は先月、交通事故で亡くなっていた。それで優里をウチで引き取る事になったのだった。
私の母親は優里を毛嫌いしていた。
しかし父の強い意向には逆らえなく、表面上だけは穏やかな義理の親子を演じていた。
優里は母の目を気にしてか、母がいる時は私に近づいて来なかった。
しかし母の留守の時は、私にお菓子を作ってくれたり、宿題をみてくれた。
私は家に帰り母がいるとガッカリしたものだった。
優里は聡明で優しく、とてもいい匂いがした。
私は2階の自室にいる時に、隣の部屋から物音がして優里の気配を感じると何故かいつもソワソワした気分になった。
それは私が中学校に入った年だった。
両親は遠方の親類の結婚式で、泊まりで家を空ける事になり、私と優里は2人で留守番をする事になった。
その日は嵐で、強風のため夜になると辺り一帯は停電していた。
懐中電灯の灯りだけの暗い部屋
私と優里は夕飯もそこそこに寝てしまう事にした。
強風と雨が家を揺らす。
時折、雷がなるとカーテンの隙間から部屋の様子がわかるほどの光と轟音が響いた。
その時、部屋のドアがノックされた…
私は枕元の懐中電灯をつけてドアをあけた。
そこには枕と懐中電灯を抱え青白い顔をした優里がたっていた
「司、カミナリが怖くて仕方ないから
一緒に寝てもいい?」
優里は大の雷嫌いだった。
「ああ」と頷くと優里を部屋に入れた。
「狭くなってゴメンね」といいながら
優里がベッドの壁際に壁を向いて横になり、その隣に私が横になった。
初めて会った時に、高いと感じた優里の
身長を中学生になった私は、いつの間にか超えていた…
雷が鳴る度に震える優里の肩は小さく
儚げにみえる。
いつもの優里の匂いがした…
後ろ向きの優里の黒髪を一瞬だけ、落雷の光が照らす…
その髪はまるで濡れているかのように、艶やかだった。
私は優里に触れたい強い衝動に駆られていた。
たぶん、ずっと以前から…
一際大きな雷鳴で部屋が震えた。
私はゆっくりとベッドから起き上がった
最初のコメントを投稿しよう!