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杏奈
四階建の別棟、どん詰まりにある普段使われていない階段が陸上部の部室として使われていた。
一階と二階の間の踊り場には、ベンチプレスやエアロバイクなどのトレーニング器具がところ狭しと並べられており、
二階と三階の踊り場は、実験室用の大きな机が1つ置かれその上には男子部員達の荷物が散乱していた。
三階と四階の踊り場は女子部員用の更衣室になっていて、男子部員達は基本三階から上には来てはいけない暗黙のルールになっている。
一年生の立石杏奈は苛立ちを隠せなかった。
理由は2ヶ月程前に入ってきた一つ上の先輩である水上月子だった。
もうすぐ三年生は全国中学駅伝の予選会を最後に部活を引退する。
ウチのような弱小中学では、絶対に本戦に出場することはできなかった。
だからこの予選会が最後の大会になるのだ。
もうすぐ部長の石橋先輩に部活で会えなくなる事を思うと、杏奈は溜息しか出なかった。
もちろん石橋先輩が自分の事なんて、なんとも思ってない事はわかっていたが
校内で姿を見かけるだけになってしまうのは寂しくて仕方がない。
もう先輩の隣でランニングも出来なくなるのかと、想像するだけで胸が張り裂けそうだった
そんな杏奈に現実を突きつけるのが月子だった。
初めて月子を見た時、杏奈はただただ綺麗だと思った。
白い肌にサラサラの黒い髪は、まるで日本人形の様だった。
凄く気がきいて、いつもニコニコして誰からも好かれている。
もし水上先輩が告白したら石橋先輩でも
付き合ってしまうだろうと杏奈は思っていた。
水上先輩は私が欲しい物をすべて持っていた。
たった二ヶ月で水上先輩はどんどん短距離の自己ベストを更新していた。
このまま記録が伸び続ければ、この弱小陸上部から全国に出る選手が出るかも知れない
何でこんなに不平等なんだろう?
ズルい…
ズルい…
ズルい…
何で彼女ばかりいっぱい何でも持ってるの?
何で私じゃなくて彼女なの?
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