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陸上部
月子は今井に陸上部への入部届けを出した。
陸上競技に関しては全く興味がない。
運動経験もほとんどなく、学校でやる体育の授業くらいだった。
なぜ陸上部に入ったのかといえば、もちろん今井先生に近づきその正体を知りたかったからだ…
とりあえず、今井先生が投げたボールを投げ返した形にはなった。
次は今井先生がどう出るかを見極める番だ。
今井先生がこの学校に来たのは偶然だろうか?
月子をもってしても感情を読めない人間
文字通り、今井は何を考えているかわからない。
向こうから近づいてきたのには、それなりの理由があるのかもしれない。
そして月子は陸上部に入った事を後悔する事になる…
「酷いな… アイツは何でココにいるんだ?」
陸上部部長の石橋はおもわず呟いていた。
視線の先には新入部員の水上月子がいた
石橋が顧問の今井先生に呼ばれ教務室に行くと新入部員が入ったから、よろしくと軽く言われた
「専門種目は何ですか?」
「陸上未経験でまだ何にもわからないが
たぶん短距離に向いてる気がする。」
「そうですか。 わかりました…」
「有望な人材だから楽しみにしていろ。」
と言うと今井先生は機嫌良さようにガッツポーズをしていた。
今年の春から病欠している顧問の杉山先生の代替できた今井先生は、授業だけでなくそのまま陸上部の顧問も引き継いでいた。
今井先生は、見た目はバリバリの体育会系なのに社会科の教師だったのは笑ったが中身は見た目通りの体育会系だった。
前任の杉山先生は形ばかりの顧問で練習内容は部長に任せきりだったが、今井先生は部員個々に練習課題を与えていた。
たまに来てちらっと練習風景を眺めているだけなのに、そのアドバイスは的確で
各々が確実に記録を伸ばしている。
石橋は今井にどうやってアドバイスを出しているのか一度尋ねた事があった。
「一言で言えば動き方かな?」
と今井先生は言った。
「下手な人間は動きが汚い。
俺はその子の一番動きの汚い部分が直るようにアドバイスを出している。
プロのレベルまではわからないが、一般的な学校の部活レベルならそれでソコソコまでいける。」
「動きが汚いというのは何となくわかりますが、その原因がどこにあってどうすれば直るかなんてよくわかりますね?」
「俺は一時期、筋肉に興味があって色々勉強した時期があったからなぁ…、」
と言いながら女の子の顔位ある二の腕をうれしせうに見せるとニカッと笑った。
筋肉バカだ…
この先生がもっと前から顧問だったら良かったと石橋は思ったが、先生が調子にのらないようにソレは黙っていた。
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