石橋

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石橋

ちょっと細いな… これが水上月子を見た時の陸上部部長 石橋の第一印象だった。 今井先生は短距離向きだと言っていたが 月子の体重を考えると燃費が重視される長距離の方が向いていそうだと石橋は思った。 明らかに投てき競技には向いていないだろう… その日、練習をしているとグラウンドに向かって歩いてくる今井先生に気がついた。 その後ろから半袖と短パンを履いた女子生徒が付いてくる。 アレが新入部員だなと石橋は思った。 180cmあるゴツい今井先生の後から ついてくるチンマリとした女子生徒の身長は160cmもないだろう。 まるで親子連れのようだと何となく思った。 まだ日焼けしていない露出した手足が 真っ白で初々しい。 「ちょっと集まってくれ」 今井先生が声をかけると部員達が集まってくる。 「新入部員の水上月子さんです。 皆さん仲良くしてやってくれ。 彼女は俺が発見した逸材だ… 陸上は未経験だがナメてかかるとあっと言う間に抜かれちゃうからね。」 自分のハードルを上げるだけ上げられてしまった真っ白な月子は、真っ赤な顔になって「よろしくお願いします」と一言だけ言うとペコリと頭を下げた。 「じゃあ石橋あとは任せた。」 と言うと月子を残して今井は帰っていく。 石橋はハァと一つため息をつくと 「とりあえず短距離パートに入ってくれ。始めはきつかったら適当に休憩を入れていいから… 結城頼んだぞ。」 と指示を出した。 「ハーイ月子ちゃんコッチコッチ。」 三年の結城和人が月子を手招きした。 何でコイツこんなにチャラいんだ… と半ば呆れながら、ふと隣りの加藤葵を見るとキレかけていた。 結城と加藤は付き合っている。 練習後に結城が加藤にシバカレルのは自明の理だな… ご愁傷様と結城を見送った。 ハァと再びため息をつくと 「長距離パートはロードに行くぞ。」 と石橋は部員に声をかけ5Kmほど離れた森林公園に向かって走り始めた…
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