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深淵
某国
密教研究庁の検索AIが深淵と
呼ばれる現象の事例らしき物を発見し報告をあげた。
密教研究庁は国の重要な観光資源である
寺院群と、それに関わる教典等の宗教的文化遺産の保護と研究を行っている。
しかしながら、その実態は他国からの依頼を受けて、呪殺による要人の暗殺を行う政府の機関であった。
密教研究庁ではその他にも、古の呪術の研究や、新しい術式開発なども行われていた。
その一環で特殊な検索AIが使われている
ネット上に溢れる、古今東西のいわゆるオカルトと呼ばれている物の中から、信憑性の高い物や、研究開発に使えそうな物をAIがピックアップし、それを研究員が更に厳選して報告書に上げる。
そんな検索ファイルの中の1つにソレはあった。
場所は日本、ある眼科医の学会報告の資料の中にあった、原因不明の後天性の眼の色素異常の症例…
左眼のアップの写真それが深淵の特徴に酷似しているという報告だった
写真自体の撮影日は5年前の日付けになっていた。
深淵は日本で忍を生業にしていた赤城一族に稀に現れる、先天性の眼の色素異常だった。
紺碧の瞳を持った者は、感情と人の気配を読む事に秀逸した能力を発揮したが、何百年も前に一族郎党滅亡していた。
「うーん 最近撮ったんだけどっていう日本狼の写真を見せられた気分だな」
タキは思わず呟く
日本狼は明治時代を最後に発見されていない。 もしいたら大騒ぎだ…
確かに見た感じは、昔見た深淵によく似ている気がする。
タキは、ほぼ根拠の無い自分の経験則に基づく確率をはじく。
普通の病気によるものである確立は
およそ99%
赤城一族の生き残りによる深淵の確立は
およそ0.9%
コレがヤツである可能性は
およそ0.1%
可能性はゼロでは無い
タキには深淵と浅からぬ因縁があった。
上司に研究の出張希望を出してみようと思った。
人魚の肉を喰らい、その呪いで何百年も
生きている、研究材料兼、研究員のお願いならたぶん通るだろう。
久しぶりの日本だった。
日本に行ったら何を食べようか?
ちょっとそんな事を考えていた。
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