踏絵

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踏絵

町田は提携しているホテルの従業員控え室で飲食店の仕入れ伝票の整理をしていた。 部屋に客が入った… もうすぐがやって来る 町田達はココでトラブルに備え、待機しながら事務仕事をこなす。 比丘尼は春を売る信者だ… 一般信者の達は比丘尼の存在を知らない。 比丘尼の収益は一度給料として彼女達の 懐には入るが、そのほとんどは教団に献金される。 家族に仕送りをする者もいるが、それはほんの一握りにすぎない。 彼女達は家族と縁が薄い者が多かった。 比丘尼の生活は以上に管理されている。 睡眠時間、食事の摂取カロリーから健康状態、運動時間まで… 彼女達は厳しい教義に縛られれば縛られるほど、幸せを感じているように見えた 教祖によれば この世は泡沫に過ぎない… 現世でいっときの間、毎日決められた教えをこなせば、死後の来世で永遠の安寧は約束されるそうだ 町田には比丘尼達は教祖に洗脳されているようにしか見えなかった。 になる時、町田は鼠の班長の 伊藤に聞かれた… 「お前は神を信じているか?」 町田は首を横に振った。 初めて伊藤に会った日のように… 伊藤は楽しそうに言った 「神を信じる者は鼠になれない決まりになっている… 神を信じないお前は鼠になれるが やってみるか?」 町田は黙って頷いた。 鼠は比丘尼達を管理はするが、教団内のカーストでは 教祖 巫女 比丘尼 幹部職 愚者 鼠 となっている… 比丘尼は幹部よりカースト上位に位置し 鼠は神を信じない穢れたものなので最下層にいる。 伊藤には 「比丘尼に手を出した鼠は俺が消さないといけないから手間をかけさせるな。」 と言われていた。 あれは絶対に冗談ではないと町田は思っていた。 比丘尼の教祖への忠誠心は厚く、教祖も比丘尼を信頼していた。 彼女達はホストに貢ぐように教祖に貢いでいた。 比丘尼達と教祖に体の関係は無いようだったが、教祖は見えない鎖で彼女達の心を縛っているように町田には感じた。 教祖の言う通りに、現世できちんと教えられた一日をこなす事ができれば、来世での永遠の安寧に一歩近づける。 それが比丘尼達にとっての現世での充実した日々だった。 そしてある程度の年齢になると、愚者に戻るか教団の幹部達と結婚する。 相手を選ぶ権利は比丘尼にある。 幹部達にも断る権利はあるが、比丘尼からの求婚への拒絶は教団内での死だった 比丘尼は踏絵だった。 教祖は比丘尼を使い幹部達の忠誠を測っていた。 比丘尼を娶った後も、比丘尼を粗末に扱えば教祖により罰が与えられる。 比丘尼達は夫である幹部達の動向を教祖に報告する監視役でもある。 教祖は言う 身体の穢れは禊ぎを行えば落とす事が出来るが、心の穢れは禊ぎでは落とせない 心の穢れは日々の修行を続ける事でしか落とす事は出来ないと…
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