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李翰の今日は一言で言うと惨憺だった。
あるいは、洪鈞(大ろくろ)が混沌から天地と人を陶してからずっと惨憺だった。
洪鈞世界の中央には、年に三回は氾濫する大河と、その恩恵たる沃野が広がる。
周辺住人たちはこの地を、世界の中心――中原と呼び、焦がれ、統治者たらんと争う。
実際のところ、洪鈞文明は同時代最高の文化を有していたが、その水準に達した地域は他にいくつもあった。洪鈞が必ずしも世界の中心ではなく、世界のすべてでもないことは、うすうすみな気づいていたが、その誰もがこう思っているだろう。
まずは洪鈞どうにかしろ。
少なくとも李翰は願った。橋の下で寝起きし、市で芸を売る窮乏だからこそ日々こいねがった。
どこかの偉い人、洪鈞どうにかしろ。
血霧にむせて起こされる。
蹄鉄の音が遠ざかったのを確認して眠る。
市の穀物は高騰しすぎて金銀より貴い、
王たちが中原を巡り二百年争うこの世界を。
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