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   *  佐玖は一つ年下の中学二年生だった。幼いころからアイスホッケーのクラブチームに入っていた俺たちは、小学校からの顔見知りといえる。その前のことはよく覚えていない。  佐玖はライバルチームであるエンペラーズのフォワード。俺はシーリオンズのフォワード。  県内のアイスホッケーチームの数は限られていたので、公式試合、練習試合、合同練習など顔を合わせることは多いが、話したことはそれほど多くなかった。  チーム内ならともかく、あまり社交的ではない佐玖が、他チームの選手と話している姿はほとんど見たことがない。加えて俺も人見知りで、シーリオンズの連中は何でもなかったが、他チームとなると上手く会話ができたためしがなかった。  つまり、どう思い出しても俺たちはほとんど会話という会話をしたことがなかったし、好かれる理由が思い当たらなかった。 「俺と佐玖ってほとんど話したことないよな?」 「まあ……」 「付き合うにはお互いを知らなすぎると思うんだけど」  そう答えると、佐玖の表情筋に初めての変化が現れた。 「もう少しお互いを知ったら付き合えるってこと?」 「知らないよりは」 「オレ、男だよ。付き合える可能性があるの?」  言われて初めて性別について考えた。確かに佐玖は男で、俺も男だった。  
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