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 スマホは持っていたが佐玖の連絡先は入っていない。  携帯の主な使い道は、あの馬鹿でかいホッケーバックを運ぶのに、練習が終わったら親などの保護者を呼ぶため。元々終わる時間がわかっている場合はその時間を伝えるが、未定な場合も少なくはなかった。  氷上練習は時間がしっかりと区切られていたが、陸上練習だとある程度時間の融通がきく場合が多く、少し長引いたり、突然の雨で中止になったり、そういうときにスマホが大活躍する。  それ以外はゲームアプリやSNSやゲームアプリやSNS。中学生なんてそんなものだろう。  佐玖もスマホを持っているのを見かけたことがあるので、交換しようと思えば連絡先の交換はできる。だけどあいつは聞いてこなかったし、こちらから突然聞いていいものかと迷ってしまう。  合同練習が終わって外のベンチに座り、親に連絡する前に佐玖を待つことにした。どうせ家は遠くないので、連絡すればすぐに迎えに来てもらえる。  入り口から一番遠いベンチに腰掛け、ホッケーバックを足元に、その上にスティックを二本乗せた。夜だというのに蒸し蒸しと暑苦しく、ベンチに座っているだけで額に汗が滲んだ。  次々と、チームメイトやエンペラーズのメンバーが帰っていく。 「お疲れさまでしたー」 「お疲れー」 「つかれしたー」  待てど暮らせど佐玖は出てこない。もしかしたら、さっさと帰ってしまっていたのかもしれないとため息をついた。思い立ったが吉日と思ったが、吉日を逃してしまった場合はどうなるのだろう。
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