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その時だった。数人のエンペラーズのメンバーがこちらの方へ歩いてくるのが見えた。見ると何と真ん中には佐玖がいた。蘭丸と颯介が佐玖を挟み込むような形で肩を組み、顔を近づけて楽しそうに話をしていた。
満面の笑みの佐玖を見て、見てはいけないものを見てしまった気がして思わず目をそらす。横目で盗み見ると、三人は団子のようにくっついたまま俺の座るベンチの横を通りすぎた。佐玖はホッケーバックを背負っていたが、他の二人は手ぶら。すでに荷物を運んだ後だったのだろう。
ふと蘭丸と目が合ってしまう。蘭丸も颯介も、佐玖と同じ中学二年生で、小学校からの顔見知りだった。
「あれ、阿希良じゃん。あきらぁー」
仕方なく軽く手を上げた。
「ほんとだ、阿希良だ」
颯介も気がつき三人でこちらへやってきた。
「阿希良さー、北海道の高校行くってホント?」
噂が他チームに届くのも早いものだと感心する。高校の話は一番に佐玖と話したかった。
「決定じゃないよ、希望はしてるけどさ。夏休みに北海道の高校の練習に参加してくる。それからだな、全国の精鋭たちが集まるだろうから」
「帰ってきたらどんなだったか教えて」
颯介は興味津々だった。
「気になる?颯介も県外の高校目指してんの?」
「一応選択肢にはある」
「まだ先だけど帰ってきたら何でも聞いて」
「おっしゃ、サンキュー」
俺たちが話している間、佐玖の表情はピクリとも動かないし、話に入ってくることもなかった。三人に別れを告げると、三人は似たような方向へと歩き始めた。
さて、俺も帰るかとスマホを取り出すと、いつ戻ってきたのか目の前に佐玖が立っていた。
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