フェイスオフ

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   *  ベンチの端に移動してから、隣の空いた場所をぽんぽんと軽く叩いた。  佐玖は背負っていたホッケーバックをどさりと地面に下ろすと、隣にどかっと腰掛ける。佐玖は細いが、俺より一周りくらいは大きかった。 「もう話もしてくれないかと思った……」 「俺、そんなこと言ったっけ」 「言ってないけど」  俺は、ははっとちょっと大袈裟に笑ってみせた。 「あれから色々考えたんだけど」 「色々?」 「うん、色々」 「オレの告白についてとか?」 「そう」 「もう忘れていいよ。嫌われてないならいいし」  佐玖はちょっぴり渇いた笑いを浮かべた。 「それなんだけどさ、お互いを知らなさすぎるって言ったの覚えてる?」 「覚えてるけど……」 「そう、だからもっと知りたいなって思うんだよな」 「知ったら付き合ってくれるの」 「それはわかんないけど」  鼻から笑いが抜けた。先のことは本当にわからなかった。 「何か意味ないじゃん。可能性があるとかならまだいいけど」 「それはホントわかんないんだよな」 「意味ねー」  佐玖は少しだけ大きな声で、そしていつもより少しだけ大きく口を開けて笑う。
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