7人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
*
ベンチの端に移動してから、隣の空いた場所をぽんぽんと軽く叩いた。
佐玖は背負っていたホッケーバックをどさりと地面に下ろすと、隣にどかっと腰掛ける。佐玖は細いが、俺より一周りくらいは大きかった。
「もう話もしてくれないかと思った……」
「俺、そんなこと言ったっけ」
「言ってないけど」
俺は、ははっとちょっと大袈裟に笑ってみせた。
「あれから色々考えたんだけど」
「色々?」
「うん、色々」
「オレの告白についてとか?」
「そう」
「もう忘れていいよ。嫌われてないならいいし」
佐玖はちょっぴり渇いた笑いを浮かべた。
「それなんだけどさ、お互いを知らなさすぎるって言ったの覚えてる?」
「覚えてるけど……」
「そう、だからもっと知りたいなって思うんだよな」
「知ったら付き合ってくれるの」
「それはわかんないけど」
鼻から笑いが抜けた。先のことは本当にわからなかった。
「何か意味ないじゃん。可能性があるとかならまだいいけど」
「それはホントわかんないんだよな」
「意味ねー」
佐玖は少しだけ大きな声で、そしていつもより少しだけ大きく口を開けて笑う。
最初のコメントを投稿しよう!