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「ちなみにさ、何が知りたいの?」
「んー、いつから好き?とか。もう、好きじゃないなら答えなくていいけど」
「あー……気がついたらって感じかな。告白するつもりもなかったけど、阿希良、三年生だからさ」
「なるほど、最後だからか」
「うん、北海道に行くって噂も聞いてたし」
県内でアイスホッケーに打ち込める高校はなかった。部活として取り扱っている高校がないのだ。強いクラブチームもない。
エンペラーズが強いといっても、しょせん全国に出れば北海道や関東のチームに負けてしまう。だから、ホッケーを続けたいと思う人はたいてい北海道や関東の強い高校へと進学する。稀に海外へと飛び立つ人もいるくらいだった。
(お前も北海道に来ればいいじゃん)
そう出かかった言葉を急いで飲み込んだ。さすがにそれはひどい。告白を断っておいて、付き合えるかどうかもわからないのに、北海道には来いだなんて何様のつもりだろう。あまりにも虫がよすぎる。
「まだ決定じゃないよ。行きたいけど」
「うん」
「ダメならこれからでも間に合う関東とか、東北とかの高校を受けようって思ってる。それでもダメならこっちで進学するしかないけど」
「そっか……」
「お前も……県外に出るつもりだろ?」
本当は〈北海道に〉と言いたかったが、〈県外〉と言葉を濁さざるをえなかった。
「まあ、一応は」
佐玖もどこか歯切れの悪い返答だったが、気づかない振りをして話を続けた。
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