2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「織姫。僕は今日、君に言わなければならないことがあるんだ」
「えっ? 話って何?」
いつも以上に増して深い藍色の天の川の上で、彦星の悲しそうな顔が私の目に映る。
せっかく、今日は一年に一度出会える日だというのに……彦星が悲しそうにしていると、私までもが悲しくなってしまう。
「……落ち着いて、聞いて欲しいんだ。僕は、今日ーーこの宇宙(ほし)から離れなければならなくなった」
「え……」
まるでガラスが割れるかのように、その言葉を聞いた瞬間、心にヒビが入った。
「僕も、こんなことになるなんて思ってもなかったよ。……いざ君を目の前にすると、辛さは倍増するばかりだ。どうしようもないね」
横を向いて額を手で押さえる彦星。必死に泣かないようにしているのが分かって、私は額に当てていない、もう片方の手を自分の両手でギュッと握った。
「どうして彦星がそんな目に遭わなければならないの……! それ、だれから言われたの?」
「……君の、お父さんからだよ」
私は目を見開いてしまった。
私のお父さんは、いわゆる天の神様だ。天に住む者達を見守り、その者達の環境を整え、そしてその者達の人生をも決める。至って、誰も逆らうことの出来ない人だ。
「彦星が何したっていうのよ……。私は、これ以上、彦星と離れ離れになるなんて考えられないわ。……私、お父さんを説得してみる!」
「……その必要はないよ、織姫」
「えっ? どうして?」
彦星は、私の手をそっと離して少し微笑むと、天を見上げながら口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!