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転職からやり直し
「ああ、この迷宮攻略は始めから間違っていたんだ」
「何を呟いている。ボス部屋で怖じ気づいたのか?」
「なあ、もし最初の転職で違う職業が選べるとしたら、何を選んだ?」
「は? 勇者に決まっているだろう。全職業の中で最もステータスが高く、攻撃魔法と回復魔法の両方が使えて全ての武器と防具が装備できるんだぞ」
「もし成れたのならソロでもこの迷宮を攻略出来たかもな」
「何が言いたい?」
「迷宮においてパーティー制限は六名と決まっているよな?」
「当然だ。七名では迷宮に入れないんだから」
「なら従魔だったら?」
「六名と一緒に何体でも連れて行けた筈だ」
「扉の壁画に何が描かれているか解るか?」
「六人の仲間と従魔達が描かれているな」
「この迷宮はテイマーが居ないと攻略出来ないかもしれない」
「何を馬鹿な事を。あんな不遇職誰に誰が成りたがるかよ」
「前提が間違っていたとしたら?」
「従魔に経験値を分割されて一体増える度に、レベルが上がり難くなる事がか?」
「時間をかけて今のレベルに辿り着いた時、従魔が沢山居たら戦力は単純に考えても、遥かに上になるだろう」
「何年かかると思っているんだ。俺達冒険者の寿命なんて十数年が限界だ。老人になる迄レベル上げを待てる訳がないだろう」
「それでも、始めから頑張れば五年は時間をかけられた。俺達がパーティーを組んだ時間と同じだけ従魔は育てられる筈だ」
「今更だな。やり直しなんて出来ないんだから」
「そうだな」
そして俺達パーティーは全滅した。圧倒的物量差に範囲攻撃魔法だけでは対処仕切れなかったからだ。
この迷宮は前人未到として、数十年間だれも最下層に辿り着けていない。何故か。
それは他の迷宮攻略において誰もテイマーをパーティーに加えた状態で達成したことが無かったからだ。
不遇職。従魔と経験値が分割されて、どの職業よりもレベルの上がりが遅く、他の仲間と足並みが揃い難い為、パーティーでお荷物扱いされてしまう。
けれどもし、時間をかけて従魔を増やしレベルが上がりきれたのなら、迷宮攻略は出来たかもしれない。
俺が目を覚ました時、六年前に戻っていた事に気付いたのは、転職で職業が決まった際に授かるギフトが無かったからだ。
六年前のあの日、パーティーに誘われ易いと優遇されていた職業を気軽に選んでしまったせいで、迷宮で全滅に至ってしまったんだ。
けれど、何故か俺はまだ転職していないあの頃に戻っていた。理由は解らないが、これはやり直しが出来るチャンスだ。
テイマーに転職すればあの迷宮を攻略出来るかもしれない。そして、全滅してしまった仲間を助けられるかもしれない。
俺は不遇職と呼ばれ忌み嫌われているテイマーに成った。最初はきっと、誰も俺とパーティーを組んでくれないだろう。
だから時間をかけてソロでも良いから、少しずつレベルを上げていこう。最初的に物量差を埋められる実力を身に付けられたなら、必ずパーティーを組んでくれる筈だ。
俺はギフトである従魔召喚を行い、初めての従魔契約を結んだ。ーーースライムと。
不遇職な訳だ。
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