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 「もう少しここで呑む」と言った二人にお礼とお詫びを言って店を出たとき、天気予報どおり雨が降り始めていた。今夜から全国的に雨になると言っていた。そういえば沖縄と九州は、もう梅雨入りしたらしい。書類の入ったバッグを抱きかかえるようにして駅へと急いだ。  書類が入ったバッグがなければ、傘をささなくてもいいほどの弱い雨だった。  家に帰ってシャワーを浴びて時計を見ると、20時45分。瑛太の予定にアクシデントがなければ、あと15分で電話がかかってくる。  瑛太が名古屋に行ったばかりの頃は、ほとんど毎日話していた。通話フリープランの携帯に感謝しながら。  でも、私の仕事が忙しかったり、瑛太が接待で遅くなったり、繋がらないときに使いだしたメッセージアプリのやり取りが普通になり、文字はスタンプに変わっていった。月に一度の帰阪も瑛太の疲労と経済的な問題で、二か月に一度になっている。  それでもこうして誕生日をちゃんと覚えていて、「電話をする」と言ってくれることが嬉しかった。  ビデオ通話ならいいなあと思いながら、風呂上りだけど眉を描いて、薄いピンクの口紅を塗った。  窓の外から聞こえる雨音は強くなっている。ペットボトルのミネラルウォーターを飲みながらベランダに近づいた。カーテンを少し開けてみた外は、かなり激しい雨。  橘先輩と桜は無事に帰れただろうか。瑛太との約束がなく、うだうだと呑んでいたらこの雨にあうところだった。 「誕生日プレゼントだね」  呟いて水を一口飲んだとき、ポケットに入れていたスマホが鳴った。
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