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屋敷を出たプラナは街を彷徨う。
生きていくには食べていかねばならず、食べて行くには金が要る。
生に執着があったわけじゃない。
自分を育てた男と女が形式上やっていたことを真似ているだけだ。
そこに自分自身の考えなど無く、ただ漠然と「金を得る」という行為を行おうとしていた。
コミュニケーション能力の乏しい15歳の娘など雇ってくれる場所など当然のように無く、唯一残る道である「身売り」をして金を稼ぐことにする。
しかし特別容姿がいいわけでも体つきがよかったわけでもなく、喘ぎ声の一つすら漏らさずにただ男の相手をするプラナにほとんどの男は萎えて罵倒した。
半年ほどそんな生活を続け、ぎりぎりで食いつないでいたプラナは変わった性癖を持つ男と出会う。
その男は不感症である自分に、逆に欲情するのだという。
男は欲望の塊を自分にぶつけた後「これからも頼む」と当時の五回分の“奉仕“の金額を手渡しした。
…冷たく、無機質な紙の質感は虚ろな自分の心を少しだけ暖かくした。
それから数年、男との関係はまだ続いていた。
自分で言うのも妙だがよく飽きずにやってくるものだ。
男は欲望の捌け口として自分に特別な感情を持っていたわけでは無い。
だがこうまで定期的に会いに来ると、愛されているのと変わらないのかもしれない。
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