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「お主ら、どこかへゆくのか」
奇妙な男はそう言った。
周囲の者は警戒した。侍のいでたちとは違うこの男は野盗の一味ではないのか、と。
「お主は?」
柏原衛守が尋ねた。
「失礼つかまつった。拙者は肥富数馬と申す。遠くは蝦夷より参った者で、剣の腕を上げどこかの藩に仕官をと考えている者にござる。先日前橋で、腕の立つ者がこちらの方にいると聞いて参ったのでござるが……」
「すまぬが、今はそなたに構っている暇はない。これから野盗を討ちに行かねばならぬからな」
(続く)
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