(二)

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「お主ら、どこかへゆくのか」  奇妙な男はそう言った。  周囲の者は警戒した。侍のいでたちとは違うこの男は野盗の一味ではないのか、と。 「お主は?」  柏原衛守が尋ねた。 「失礼つかまつった。拙者は肥富(こえとみ)数馬(かずま)と申す。遠くは蝦夷(えぞ)より参った者で、剣の腕を上げどこかの藩に仕官をと考えている者にござる。先日前橋で、腕の立つ者がこちらの方にいると聞いて参ったのでござるが……」 「すまぬが、今はそなたに構っている(いとま)はない。これから野盗を討ちに行かねばならぬからな」 (続く)
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