ジュアスside飛び込んできた驚き

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ジュアスside飛び込んできた驚き

私は背中に汗を滲ませて馬を駆けさせていた。何がどうなっているのか、よく分からなかった。景色はすっかり日が傾き始めていて、私の行く手には美しい夕焼けが彩り始めていた。 早馬の使者が来たのは午後のティータイムが終わる頃だったろうか。執事から渡された刻印を見て、ドキリと胸が鳴ったのは良い知らせなのか、悪い知らせなのか。 ジュリランド伯爵自らの要領を得ない簡単な手紙は、私がマリーへの求婚を取りやめたのかという確認だった。何がどうなってそんな話になっているのか、私は直接伯爵家に赴くしか方法がないと悟ったのだ。 日が沈む前に屋敷に到着した私を見て驚く伯爵家の面々だったが、それでも心良く迎えてくれたのはマリーの爆弾発言に皆が動揺しているせいらしかった。私は伯爵からの話を簡単に聞くと、マリーと二人で話がしたいと頼み込んだ。 少しの迷いの後、伯爵は頷くと私をマリーの元へ案内する様にと執事に申し付けた。 私はマリーの部屋の前に立つと、案内されるままに部屋へ入った。マリーの部屋に入ったのはこれが初めての事だった。まだ柔らかな少女の面影を残す部屋の装飾が、マリーがまだデビュタントである事を思い出させた。 普段の彼女の行動や言葉があまりにも破天荒すぎるせいで、私は兎角彼女の年齢を忘れてしまう。時々随分と大人の様な物言いもする彼女は、紛れもなく16歳になったばかりのうら若き乙女なのだ。 私はその事になぜか少しばかりのショックを覚えながら、部屋を歩き進んだ。目の前の景色の良い大窓の側のソファから、驚いた顔のマリーが立ち上がった。 「…ジュアス様。どうして?」 私の知っている無邪気なマリーはそこに居なかった。少し面やつれした、しかし儚げで更に美しさを増したマリーは、正に月の女神の様に佇んでいた。 私はドキドキと心臓の鼓動が早くなるのを覚えながらゆっくりと近づくと、そっとマリーの手を握りしめて言った。 「マリー。約束の一ヶ月だ。…私はマリーを愛している。私と結婚しよう。」 マリーは、私が何を言ってるのか理解できない様に、目を見張っていた。けれど大きな青い瞳から、美しい雫を一粒溢れ落とすと、次々に雨垂れの様にポロポロと涙を零しながら声を立てずに静かに泣き始めた。 私はそっとマリーを抱き寄せて、ゆっくりと華奢な背中を撫でながら、そして薔薇とすみれの甘い香りにうっとりとしながら、マリーの涙が止まるまで愛を囁いた。
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